2012年06月20日
六月の舞妓衣装(ふく苗)


梅雨空の合間に見る青空はとても気持ちが良いものどすね。
ふく苗さんの六月の舞妓衣装は明るい黄色とオレンジ色が心弾ませる、おぼこい印象の装いどす。
柳のかんざしに白抜きの柳の上にたくさんの蹴鞠が描かれた単の着物、菊の花と葉で形どられた花菱文様の呂の染帯が若い舞妓さんのかわいらしさをひきだしています。
今月は衣替えどすので小物類もすべて夏物に変わりました。
柳は細くなよやかな姿が好まれ、万葉集などの詩歌や絵画の題材としてよく用いられてきました。
『柳腰』という細くしなやかな腰つきの美人を表す言葉は有名どすね。
蹴鞠は平安貴族のたしなみとされ、宮中や公家において盛んにまり会が催されて古文書にもその記述がしばしば見られます。
そのため王朝の優美を表す文様として好まれ、まり庭と呼ばれる専用の庭の四方隅に柳、桜、松、楓の樹を植えて蹴鞠を行うことから、それらの樹木が共に描かれることが多おす。
京都の上京区にある白峰神宮の境内社には蹴鞠の神様である精大明神が祀られており、球技、スポーツ、芸能上達の神様として今でもサッカーを始めとする有名スポーツ選手が参詣しはるそうどす。
花菱文様は貴族が最も好んだ有職文様と言われ、その中でも菊菱文様は菊の花を菱形に構成したシンプルながらも洗練された文様どす。
花と葉を組み合わせて大きく描くことにより、大胆で可憐な印象のだらりの帯になっていますね。
梅雨明けが待ち遠しい今日この頃ですがどうぞ健やかにお過ごしくださいませ。
Posted by しげ森
at 21:59
2012年06月15日
六月の芸妓衣装(ふく紘)




本格的な夏を前に木々の緑が色濃くなってまいりました。
ふく紘さんの六月の芸妓衣装は柔らかな藤色が初夏を感じさせる上品な装いどす。
流水文に青もみじが散らされた単衣の着物と、扇面文が大きく描かれた呂の染帯が芸妓さんらしい優美さをかもしだしています。
今月から衣替えどすので小物類もすべて夏物どす。
かつらに挿す櫛も涼しげなものに変わりました。
水をモチーフにした文様は古くから見られ、その中でも流水文には最も古いと云われている文様どす。
楓は春の桜と並んで日本人の季節感を代表する樹木で、葉の色や形の面白さから桃山時代以降数多く使われてきました。
秋の紅葉だけではなく、赤く色づく前の清々しい新緑の葉が使われることも多く、流水と合わせることでこの時期にふさわしい爽やかさが表現されています。
扇面文は扇文、末広文とも呼ばれ、末に広がるその姿から縁起の良い吉兆の文様とされています。
今回ふく紘さんが締めている染帯は、しげ森のお姉さん(元芸妓・ふく笑さん)が自前の芸妓さん(家を出て一人前になった芸妓さんのことをこう呼びます)になったときに初めてあつらえた思い出深い帯どす。
大事な帯を貸していただいたふく紘さんは大切に締めながらお座敷をきばったはります。
梅雨冷えの肌寒い日もございますので、皆さま体調などくずされないようにお気をつけくださいませ。
2012年06月15日
六月の舞妓衣装(小ふく)


京の空にも梅雨がやってまいりました。
小ふくさんの六月の舞妓衣装は優しげな印象の少し大人っぽい装いどす。
アジサイのかんざしに無双(むそう)の着物、花菱文様の帯が華やかさの中にお姉さんの舞妓さんらしい落ち着きを感じさせます。
今月は衣替えどすので小物類もすべて夏物に変わりました。
アジサイは万葉集からその名がみられる日本原産の花どす。
江戸時代にオランダ商館の医師として長崎に滞在したシーボルトはこの花に魅せられ、日本での妻だった『お滝さん』にちなんで『ハイドランジァ・オタクサ』と名付けてヨーロッパに紹介しました。
そのため今でも長崎ではアジサイのことをオタクサと呼ぶそうどす。
無双(むそう)の着物は色、柄の違う二枚の薄手の紗(しゃ)を重ねて仕立てられた贅沢な着物どす。
下の生地は白地に模様が入っており、上の生地は濃い目の無地の紗(しゃ)が合わせられて下の柄が透けて見えるように工夫されています。
小ふくさんが着ている薄桃色の紗(しゃ)の下から見えているのは、流水に籠と葦が配された意匠で、梅雨空を忘れさせてくれるような涼やかさを演出しています。
美しい透け感が見る人を楽しませてくれる無双のお着物どすが、二枚重ねなこともあり、着ると実はけっこう暑おす。
花菱文は菱形の中に四弁の唐花を入れた文様で「唐花菱文」の略称どす。
文様としては古くからあり、正倉院の宝物にすでにその姿が多く見られます。
うっとうしい毎日ですが皆さまどうかくれぐれもご自愛ください。